声を届けるということ
増田さんがPON!の月曜レギュラーになった。
こんなに、叫んでしまうほど嬉しいニュースは久しぶりな気がする。
アルバムが発売され、ツアーももうすぐ始まるというわくわくとした気分の日々に、さらに喜びが加わって気分が盛り上がってしまった。
その日、増田さんがPON!に出演するという情報はツイッターで知った。
本当はZIP!への出演情報がアップされてて、だから起きてからずっとテレビ見ながら増田さんの出番を待っていた。
結局その情報が間違いだったらしく、ZIP!には最後まで増田さんが登場することはなかった。
そしてZIP!放送中にPON!公式ツイッターで増田さんの出演が告知されていたので、もしかするとZIP!とPON!が取り違えられて発表されたのかもしれない。
真相はわからないが、その告知ツイートを見て、たまたまその日休みだったわたしは汐留に行くことに決めた。
根が出不精で面倒くさがりなので、休みは家でダラダラ過ごすのが好きなわたしは、その日もそうやって過ごすつもりでまだパジャマでいた。
それから着替えて化粧して、番組開始に間に合うように出かけるのはわたしにはなかなかハードルが高かった。
でも、会える機会があるのに行かないのは、後できっと後悔することになると思ったのだ。それでもなんとなく気が重く、その日学校が休みだった長女を誘ってみたけど家でテレビで見たいと断られ、しぶしぶ重い腰を上げて準備した。
汐留までは家から約一時間。番組開始には余裕で間に合った。
PON!は汐留にある日本テレビのゼロスタで収録されている。
ビルの空間に突き出るように作られたスタジオで、あの派手な装飾が外からも見えるので最初はびっくりしたものだ。PON!の収録時は外から観覧することができる。
わたしは月曜レギュラーのカミナリを目当てに、何度か放送終わりを狙って行ったことがあった。
普段は平日の午前中なのでそんなに観覧の人は多くはない。
しかしこの日はさすがにいつもよりも多くの人が集まっていた。
観覧スペースは2ヶ所あって、every.のお天気コーナーで子どもたちが集まる大屋根広場のほうと、ゼロスタ前の通路を一部柵で囲ってスペースが作ってある。
わたしは少し迷ったけど、本番中スタジオの中が少しでも見えやすいと思って、通路の方の観覧スペースにした。NEVERLANDのグッズを身に付け、増田さんやNEWSのうちわを手にした若い子たちが最前にいるなかを、ひとりでそっと柵の中に入って待った。
わたしはうちわはさすがに持って来れなかったし(自意識で)、増田さんをひと目見られたらそれでいいくらいの感覚で、あまり何も考えてなかった。
番組開始時刻が迫り、ざわついた気配がしたので目をやると、出演者の皆さんと一緒に増田さんがエスカレーターを降りてくるのが見えた。特徴的な髪色はほかの出演者の中でもひときわ目立っていて、遠くからでも一発でわかった。
エスカレーターを降りた出演者集団がこちらに向かって歩いてきて、周りの子たちがおはようございます!と声をかけていたのでわたしも同じように青木アナや関根さんにおはようございます!と声をかけたけれど、増田さんが前を通る時は、もしこちらを見られたら困ると思って、無言で通りすぎる姿を見ていた。
少しくすんだオレンジ色の髪、肌があまりにも白くてきれいで息を飲んだ。
ライブ以外で増田さんを見たのはこれが初めてだった。
しかもライブの時よりもずっとずっと近い距離、手を伸ばせば触れられるくらいの距離を通りすぎていった。
動悸が激しくなりしばらくおさまらなかった。気づいたらいつのまにか増田さんはスタジオの中で椅子に座っていた。
スタジオなかほどから上はパネルがあって、ちょうど椅子に座った顔部分が遮られてしまうけど、首から下は見える。増田さんの着ていた衣装の白い背中が見えて、ガラス2枚越しで見えづらいなかをずっと目を凝らして見つめていた(まるでストーカー)。
番組が始まると周りはみんなスマホを見ていて、どうやらワンセグで番組を見ている人もいたようだった。
わたしはワンセグがなくて番組は見られないのと、ガラス越しとはいえせっかく増田さんが肉眼で見えるので、その背中ばかりずっと見ていた(だからストーカー…)。
公式ツイッターと新聞のラテ欄に、増田貴久重大発表の文字があったけれど、当然アルバムの告知だと思っていたので番組内容にはそれほど興味はなかった。
長女が家でPON!を見てるはずなので、何かあったら教えて、とは一応言ってあったけど。
番組が始まってしばらくは、背中しか見えないなかを必死で目を凝らしていたけど、そのうち中で移動してしまったらしく、誰の姿も見えなくなってしまった。
わたしもスマホをいじるしかなくなってなんとなくツイッターを見たりしてるうちに、周りからキャーーーという悲鳴、驚きの叫び声が上がった。
何か重大発表があったんだ、と悟ったけど内容がわからない。となりにいた子たちも同じくキョロキョロしていて、誰にも聞ける状況ではなく急いで長女にLINEで聞いた。(後から考えたらすぐにツイッターを見ればよかったのだが)
長女からのLINE
「まっすー」
「PONのレギュラー」
「4月から」
わたし「!!!!!!!」
まさかこんな重大発表があるとは思いもしなかった。
おさまっていた動悸が再び激しくなり、驚きとともに喜びがこみ上げて来た。
そして次に思ったのが、「増田さんに直接おめでとうを言おう!」
こんな時に汐留に来ていたのも何かの縁だ。
増田さんに言おう!
すっかりテンションが上がってしまっていたわたしは、そのことで頭がいっぱいになってしまった。
重大発表が終わり、そこでこの日の増田さんの出演は終了だったようでまもなくスタジオの外に出てきた。
歩いてくる増田さんにみんな拍手しながら「おめでとう!」と声をかけていて、増田さんはうつむきながら小声で「ありがとうございます」と繰り返していた。
わたしの近くに来た時に思い切って「おめでとう。頑張ってね」と声をかけると、うつむいたままチラッと視線を上げて一瞬わたしを見て、また小声で「ありがとうございます」と言いながら通りすぎていった。
心臓が破裂しそうに高鳴っていた。
まさか自担と言葉を交わす日が来るとは夢にも思わなかった。(まあほぼ一方的だったけど)
しかしわたしの浮かれた気持ちはすぐにしぼんでいった。
その瞬間を忘れたくないと頭の中に何度も思い浮かべると、どうしても気になることがあった。
それはわたしの声。
「おめでとう。頑張ってね」
わたしとしては精一杯の気持ちを込めて発した言葉のはずだった。
だけど何回頭に思い浮かべても、その時のわたしの声は平板でのっぺりしていて、全然感情がこもってなかった。
いや感情はこもってたけど、それがまったく表現できてなかった。
テレビを見ていて、素人さんが出演するとみんな言葉が棒読みに聞こえる。
わたしの声はまさにそれだった。
そしてプロが普段何気なくやっているように聞こえる感情豊かな表現が、
実際はどれほど難しいのかということを。
あんな声でおめでとうを言われても、きっと増田さんには伝わっていない。
どんなにびっくりして、どんなに嬉しかったのかということが。
たまたま観覧に来ていたおばさんが、気まぐれで声をかけてきたとしか思えなかったのではないか。
そんなおばさんが平板な声で「おめでとう。頑張ってね」なんて言っても、きっと伝わらない。
声で伝えるということがどんなに大変なことなのかを、わたしはこの時思い知ってしまった。
そして増田さんが今までどれだけ大変な思いをして、その声を伝えてきたのかを。
アイドルとは言い換えると、声で伝える職業なんだと思う。
歌にしろバラエティにしろ、その声で多くの人の心を動かしている。
特にNEWSは生歌で勝負しているから、その生の声でたくさんの人に思いを届けている。それがどんなにすごいことなのか。
そして声で伝えるということの難しさ、尊さ。 声で伝えるということを大切にしている増田さんは、これまでずっと戦ってきたんだ。その自分の声で。
それをわたしはこの日、痛いほどの実感として知ってしまった。
あれから二日経って、今このブログを書きながらアルバムEPCOTIAを聴いている。
その歌声が全員今までよりさらに進化していて、楽曲の良さももちろんだけど、あまりにも聴きごたえがあって震えるくらいに素晴らしい。
そしてこれほどまでに力を注ぎこんでくるNEWSが愛おしくて好きで仕方がない。
増田さん、手越くん、小山さん、シゲちゃんの歌声が、こんなにも心に響くことをたくさんの人に知って欲しい。
これからも増田さんはその声で、たくさんの人にたくさんのことを伝えていくんだろう。
CDやライブや、歌番組やそのほかのいろんな番組を通して。
そしてPON!のレギュラーになったことで、増田さんのその伝える機会がさらに増えることがとても嬉しい。
増田さんを目にする機会が増えて、増田さんのことを、その声の力をたくさんの人に知ってもらえるのが嬉しい。
わたしは増田さんの歌声がきっかけで人生が変わり、そして今ここにいる。
そんな人がこれからきっともっともっと増えていく。
声ではうまく伝えられなかったから、ここで叫んでおくね。
増田さん、PON!の月曜レギュラー本当におめでとう!!!!!!